『道祖神、祠へ還る』
その日、私は産まれて初めて、道祖神の“本体”をこの目で見た。
長い年月、静かにそこに立ち続けてきた石の神。風雨にさらされ、苔むし、ところどころ欠けながらも、そこにはどこか誇らしげな気配が漂っていた。
道祖神──
この国の小さな部落の入口に、ひっそりと佇む神様。
西洋には見られないこの文化を、私はかつて単なる「農民の祈りの対象」としか捉えていなかった。
しかし今回、修理を見守るという機会を得て、私は全く別のものを感じた。
それは、温かい記憶のかたまりだった。
誰の記録にも残っていない昔、
名前すら残らぬ無数の村人たちが、
豊作を願い、旅の安全を祈り、子の成長を願い──
石に手を合わせてきた。
祠の中で長く見えなかったご本尊は、どこか微笑んでいるようだった。
修理職人の手によって少しずつ磨かれ、欠けた部分が丁寧に補われていく様子を、私はじっと見つめていた。
やがて、祠が整えられ、ご本尊がそっと元の場所へと戻されたとき、
私は胸の奥に、何とも言えぬ静かな感動を覚えた。
それは「神を迎える」というより、
「長い旅から帰ってきた家族を迎える」ような気持ちだった。
そして確かに感じたのだ。
この道祖神もまた、村人の祈りに応え続けてきたのだと。
誇り高く、そして深い慈しみとともに。
祠の周辺には、不思議な気配が漂っていた。
風の音が違う。
空気が澄んでいる。
まるで、異なる周波数の空間に足を踏み入れたような感覚。
それはきっと、**何百年もの祈りが積み重なった“時の層”**に、私の心が触れたからなのだろう。
小さな祠の中に宿る大いなる記憶──
私はこの体験を、一生忘れない。CHATGPT
